DOS/V vs MAC

鮎川誠+山川健一 ペーパーチャット

TEXT from DOHOSHA MOOK「エムプラス」
Courtesy of WIRED MAGAZINE

タイトル

コンピュータは、ロックンロールだ。

サブ

デジタルにハマったふたりの男

鮎川誠:幻のブルース・バンド「サンハウス」を経て、78年よりシーナ&ロケッツのギタリストとして活動。ソロも含めて現在までに29枚のアルバムを発表。 http://rokkets.com/

山川健一:小説家。「鏡の中のガラスの船」で77年群像新人賞優秀作受賞。代表作は「ロックス」「安息の地」など。ロック・ヴォーカリストとして7枚のCDも発表。 http://yamaken.com/


Rock'n Computers

The Item 1995年8月、シーナ&ロケッツのギタリスト鮎川誠、DOS/V機購入。同12月、小説家でロック・ヴォーカリストの山川健一、Mac購入。  古くからの友人であり、数カ月差でコンピュータ・ユーザーとなった2人は、昨年5月、あるイベントの楽屋で互いにコンピュータに“ハマっている”ことを知る。しかもDOS/VとMac。 「2人でコンピュータの本を書いて、お揃いで出そう」と話が盛り上がり、1月に幻冬舎からそれぞれ『DOS/Vブルース』『マッキントッシュ・ハイ』を出版した2人が、コンピュータにハマった日々、ロックとコンピュータの共通点、ホームページづくりの悪戦苦闘、そしてこれからの夢を語った。

きっかけはローリング・ストーンズ

――お2人がそれぞれコンピュータに“ハマった”きっかけは何だったのですか?

山川(以下Y) ちょうど1年前くらいにローリング・ストーンズがCD-ROMを出して、僕もサンプル盤をもらったんだけど見られなかったんだ。夜中に幻冬舎まで出かけていって見せてもらった。で、こりゃもうコンピュータ買うしかないなって。Windows95のCMにはストーンズの曲(Start me up)が使われてたから迷ったんだけど、まわりのやつがMac、Macって言ってたからMacに決めたの。で、買って、スイッチ入れて、「Welcome to Macintosh」を見た瞬間にもうハマった。やらなきゃいけない書き下ろしも全然できなかった。ほら、女の人を最初、顔がきれいとか、性格が素敵だなとか思っていったん好きになると、そのうち手首が細いところもいいとか、ディテールまで好きになっていくじゃない。それと同じだよ。コンピュータに対するイメージをことごとく覆されたんだよね。それとデジタルなカラーの感じが、60年代末から70年代にかけて、鮎川さんも僕も共通して体験してきたサイケデリックカラーとまったくイコールだなと思った。それで、これを作ったのは俺と同じような体験をしたやつに違いないって思って。そしたらほんとにそうだった。スティーブ・ジョブズとウォズニアックの存在を知ってからは、もうまっしぐら。

鮎川(以下A) 僕もストーンズ。ストーンズがインターネットでライブ中継をやるという新聞記事があって、ストーンズの記事が経済欄というか、科学欄みたいなところに載ってたのがすごくおかしかったし、インターネットって何のことか分からんかったことが、すごくくやしかった。すぐに友達に電話して聞いて。そのあと、いろんな出来事が僕のまわりで起こって、たとえばe-mailアドレスを刷り込んだ名刺を同時期に3人からもらったり、友人のウィルコ・ジョンソンっていうロッカーが家で平気でコンピュータを使っていたり、シーナ&ロケッツのCD-ROM出しましょうという話がきたけど、CD-ROMって何のことか分からんとか。そういうことが立て続けに起こったのが95年の春。それで機種選びを始めたら、すごく面白くて、ハマってしまった。夜中、犬の散歩の途中にコンビニに寄ると、さすがに「ワイアード」は置いてないけど、結構コンピュータの雑誌があるんですよ。

Y DOS/Vはそれがあるからいいよな。Mac雑誌はあまり置いてないもんね。

A もう僕には広告1ページも面白くて。コンピュータの世界はなんでこんなにビビッドなんだって。最近のロックの世界は、新人が出てきても何も魅力なくって、もう二番煎じ、三番煎じばかり。あとは幼稚園の先生が手叩くみたいな、強いビートをやるだけの音楽。でもコンピュータの世界はハイエナジーで、「これいただきたい」ちゅう感じがあったんですよ。ロックしよるやつらが、こんくらいにビビッドで、ホットで、やかましくて、目立ってね。このハイエナジーをもらっちゃおう、そんな感じです。

Y コンピュータのシステムっていうか、デジタルに興味をもつと、奥が深い。その奧っていうのは、未来へつながっていると思うんだよね。Macやる前はコンピュータやってるやつって、友達になりたくないなと思ってたんだけど、コンピュータって実はものすごくポジティブなもの。コンピュータ、あるいはデジタルを前提にすると、10年後の世界がレインボー色に見えるっていうかね。単にCD-ROMが見たいで始まったMacintoshライフなんだけど、思わぬ展開をみせたね。1年前はちょうど、アップルにいい話がない頃だったけど、もともと反骨精神だからさ、「いいよ、潰れる会社の買うよ」って。DOS/Vを選んだのは、鮎川さんなりの反骨精神だよね。

A 名前がフレッシュやったからね、僕にとって。Macは、僕にはある種のステイタスすぎて、今頃からやってもちゅう感じがあった。DOS/Vは、言葉がすごくおかしくってさ、ミシシッピのデルタブルースと同じように僕には聞こえてきたんよ。なんか原始的な。

Y そういうイメージってあるよね。

A 人に聞く分にはMacがいいちゅう結論があったんですね。でも本屋には、やたらDOS/Vなんとかちゅう雑誌があって、パラパラとめくると、いろんなノウハウが載ってる。あと最終的にはIBMを買ったんだけど、PCダイレクトっていうIBMの販売では、専用の電話番号で分からんこと教えてくれるって、それがもう最後の決め手。僕は気が短い性分だから、すぐ使えないと。

――毎日のように電話されてたそうですね。

A ほとんど毎日。担当者が決まってね。教えてもらう快感もあったし、電話の相手はすごく若い感じがして、すごいなぁ、勉強してる人はすごいなって。遊んでるやつには負けとらんけどさ。8月、9月は電話して、教わりながら、喜びながら、「ああそうか」ちゅうて分かった瞬間は、山川君がMacに恋をしたように、僕はコンピュータちゅうのは必ず光が見えとるって分かった。必ず明快な解答があって、希望がいつもある。そんなんで、コンピュータそのものの面白さにとりつかれた部分はありました、初心者なりにね。僕が本を書いたのは、アイ・ラブ・ロックってずっと言い続けてるのと同じように、「コンピュータもロックの仲間だぜ!」って言いたかったから。そう言えるのは快感ですね。

コンピュータは自由の象徴

――お2人ともロックスピリッツとコンピュータは共通のものだと本に書いてますね。

Y つくづく同じだと思うね。今、コンピュータは便利なものだっていう幻想が蔓延してるんだと思う。僕の1年、鮎川さんの1年半を見ても分かるけど、便利な生活してないわけよ。苦労だけ背負った。でもそれをチャラにして余りあるものがあるんだよね。それは自由だってこと。自分がもってる内在的な可能性を引き出してくれる。便利じゃないけど、自由なんだよね。そこがロックと同じなんだよね。

A ロックは“YES”ちゅうて生きること、面白がって生きること。ロックのおかげで僕は毎日楽しいし、コンピュータも楽しいのよ。僕は古いものがすごい好きなんだけど、同時に新しいものもすごく好き。ここ1年、僕がコンピュータで遊びまくったのは、新しいもの、面白いものが、インターネットに乗ってやってくるから、そんなんと出会うことに夢中になった。インターネットのブラウザがそう。ネットスケープなんて、しょっちゅう変わりよる。2、3カ月使うと「期限が切れますよ」って。それで慌てるともう次のバージョンがダウンロードできる。こんな面白いもんないわけよ。そこには新しい技術が入っとるわけ、メールが同時に送れるようになったとか。次にバージョンが上がると、メールが着いたこと知らせるマークがついたりね。

Y しかもそのスピードがすごい速いもんなぁ。あっという間にどんどん新しくなるんだからね。

A そしてその使い方を覚えるというのがゲームみたいでね。ただ、喜びとか面白味と背中合わせに、これって時間をどんだけ食うんだろうって思った。コンピュータに対する僕の最初の感想は、「俺の時間を全部奪っちゃうぜ」ってこと。頭のスイッチを切ることを、1年たってやっとこの頃覚えたなぁ。

Y 俺ねぇ、まだ到達できないなぁ。こないだロンドン行ったでしょ。Macは置いていったんだけど、人と話してもね、ボーッとしてた。Macのことを考えてるわけじゃないんだけど…。ホテルでバスタブに湯を入れてたら、いつの間にかあふれちゃった。それで目が覚めてダメだ、Macぼけだって。そのとき思ったのはMacというか、デジタルってドラッグと同じだなって。付き合い方をちゃんと考えないとやばいなって。コンピュータ始めていくつか段階があって、1段階目はホントに好きになっちゃう時期。ウインドウの開き方まで、全部点検したりね。第2段階は、僕は作家なので、小説をこれで書くべきかどうか。書く道具によって作品世界が当然変わるからすごく迷ったけど、こんなに好きになったんだから、仕事もこれでやるんだって。第3段階は発信すること。インターネットのホームページ作り。そして今は第4段階。ロンドン水浸し事件以来、少し冷静に付き合い方を考えなきゃいけないなって。

A よう分かる。

――ホームページ作りも、すべてご自分でされたんですよね。

Y そう、自分でやった。あ、最後Fetch(MacintoshのFTPソフト)で上げるとき、鮎川さんに聞いた。朝の2時か、3時に上げたんだけど、ちゃんと上がんないんですよ。20時間くらいやったけどダメ。もう限界でダウンしてたら、鮎川さんが遊びに来てくれて、「ホームページ見たっちゃ」とか言うんだよ。「夜中の2時に上げたばっかりだぜ」って言ったら「4時に見た」って。だから最初のお客さんは鮎川さんなんだけど、画像が壊れてて、メールがちゃんと送れなかったって。それで手伝ってもらって。

――お2人ともすごい習熟の早さですね。

Y サラリーマンじゃないからね。時間の制約がないから、そればっかりやってたもんね。

A 僕は仕事もたくさんしましたよ(笑)。でもテレビとかは見んようになった。最初ホームページは、はるか彼方の人たちの仕業って思ってたけど、いざ、その気になったら、すぐにダミーが自分のコンピュータの中にできちゃったんですよね。思っとるよりもやってみるが近いぜ、簡単やぜ、ってことをロックの人に伝えたくて本を書こうと思った。

Y 初心者はね、感動が大きいんだよね。ひとつできるとすぐ感動するからね。ショックウエーブムービーが1個動くと「おー、すげーじゃん」って感じで。

A ロック好きなやつは感動するのがエネルギーだからね。

Y めくるめく感動と愛欲の日々だよね。

夢はジャパニーズ・ロック・アーカイブ

――インターネットやコンピュータを使って、この次にやりたいことは何ですか。

A 僕らは日本のロックバンドの生き証人の一部なんです。日本にも50年代からロックの歴史があって、そういうロックのヒストリー、日本のロックのアーカイブをみんなで作り上げる、そんなコネクションができたらなぁちゅうのがあります。外国のサイトに行けば、マイナーなロッカーでも、情報がいっぱいあるんですよ。それくらいに世界中のロックファンは、ロックを大事にしてて巨大な横のつながりができとる。日本にもロックを育ててきたバンドがたくさんあるから、そういうバンドをロックが好きな人たちの横のつながりで紹介したい。あとは地方のライブハウスとかが、「うちでは今週だれだれがやっとる」くらいの情報を発信できればいいなと思いますね。今のロックシーンとロックの歴史、縦と横をインターネットを使ってやれば面白いんじゃないかなと、それよく思いますね。

Y 2つ方向あるんだけど、1つは自分でMacを使ってもっといろんなことをやってみたい。それは音楽であり、映像であったり。もう1つは、鮎川さんの今の話も関連するけど、ロックのリンクのサイトを作りたい。ロックっぽく、遊びっぽく、クリックしてサイトの中を自由に歩けるとか。

A 年末に「ニューイヤーロックフェスティバル」ちゅうのがあって、あれだけで日本のロックシーンのひとつの歴史で、僕ら19回も出とるんですよ。今、それに出演したたくさんのバンドを、ひとつも残さず讃えたいと思って、データ作ってます。そろそろ新しいのを追いかけるばかりが能じゃねぇなって、時間があったらバンドの名前を1個でも多くインプットしようかなと思ったりしとる。

Y その気持ち、よく分かる。7.5.3(当時のMac OSの最新バージョン)を入れたらひどいことになって。 Aaron(アイコンやウィンドウを立体的に見せるユーティリティ)とかいろんな機能拡張を入れてたせいもあるけど…。古いシステムの方が安定してたかなって。でも、そう思いながらも来年のコンピュータ・シーンすごいだろうな、ジョブズが帰ってきて面白くなりそう。だからもう1年、新しいものを追いかけてみるかなとも思うしね。日々新しいのって、面白いよ。ついこないだまで、インターネットにつながってないと不安で、風呂入るんだから切ればいいのにね。さすがにこの頃はもうやめたけど、でもMacはついてないと不安。

A 僕も自分のいる時間、スイッチは入っとる。ライブやって帰ると「メールが3通届いてます」とか出て、すぐに「ありがとう」だけ書いて送りたいけど、それだけじゃなんか悪いかなと思っていろいろ書き始めると、もう20分、30分すぐにたっちゃう。3通だと1時間過ぎたり。コンピュータの奴隷になりよるんじゃないかって思ったりする。そこいらへんをどうクールにやっていくか…。どうやったらいいんかなぁ。

Y この前もトークショーが終わって帰ると、来てた人からメール届いてるもんね。「『マッキントッシュ・ハイ』を読んで、Macに決めました」って。「偉い」って書いて返事出しといた(笑)。

感動して、面白がって、楽しく生きようぜ!

――パソコン買って、インターネットにアクセスしたい、ホームページ作りたいっていう人は多いと思いますが、そういう人に何かメッセージはありますか?

A 俺は子供の写真を載せたページを作ることでも、すごいカッコいいと思うよ。誰かがハッピーになることやから。みんながそんなに大それたもの創れるわけやない。僕もそうだけど、自分の犬の写真とか載せたり、好きなロックの話したり、そんなふうに楽しむのが最高よ。インターネットやるならDOS/Vの方が面白いけど(笑)。

Y ホームページ作るとね、自分を客観的に見ることになるよね、俺ってどういう売りだったっけなって。いい訓練になると思う。ホームページ作っていちばんよかったって思うのは、自分ていう人間をすごい客観的にみれたっていうことだね。

A 昨日、鞄から自分の50年代からの切り抜きとかを見せる外国人ロッカーと出会ったけどさ、日本人の感覚でいくとおかしいと思うんよ。でも、学ぶべきことかもね。日本人は自分のことをアピールするのを美徳としないとかあるけど、ホームページは自分でなんか言わないかんからね。人から与えられたりじゃなく、感動して、面白がって、ワイワイ言うて、同じ1日なら明るく生きた方がいい。

Source from DOHOSHA MOOK "M-plus" Apr. 1 1997
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