See Some more Snaps at ROCK SEEN opening reception at parco museum July 20 2017
ロックの神様からのプレゼント
1979年の早い春に、僕たちシーナ&ザ・ロケッツが大森でリハーサルをやっていたら、フランスのロック雑誌が東京のニューウェーヴ・シーンについての取材に来たんです。で、ひとりカメラマンが立っていて「ボブ・グルーエンです」と紹介された。それで「ええーっ??」とびっくりしたんです。「ボブ・グルーエン?? うそーっ!」って。ボブは1974年の郡山ワンステップ・フェスティバルのときに、オノ・ヨーコさんに誘われて来日したんですけど、その際に『ニュー・ミュージック・マガジン』の中村とうようさんに写真を売り込んで写真集を出すことになるんです。スライ・ストーンやらレッド・ツェッペリン、ローリングストーンズにチャック・ベリー、ティナ・ターナー……そうそうたるロック・スターたちが収められたその写真集を、僕らは九州にいる頃に見ていて。憧れの写真集だったんです。それを撮ったボブ・グルーエンが目の前にいて、シーナも一緒に盛り上がって、それでいっぺんに友達になりました。今でもボブとの出会いはロックの神様からのプレゼントみたいに思ってます。
ニューヨークの思い出
1987年にFM雑誌の取材でひとりで初めてニューヨークに行きました。そこで久しぶりにボブに電話して会ったんだけど、ボブはニューヨークで自分が知っているところを全部案内してくれたんです。そのとき思ったのは「次はひとりじゃなくてバンドでニューヨークに帰って来たい!」ということ。ブリーカー・ストリートには色んなバンドのポスターがベタベタ張ってあるんだけど、それを全部シーナ&ザ・ロケッツで埋めたいというのが大きな夢になって、それで1988年に結成10年を記念してニューヨークでレコーディングすることになったんです。ジャケットの写真はボブにお願いして。そうしたらボブはコーディネーターまでやってくれて、クリス・スペディング(ギター)やアップタウン・ホーンズがゲスト参加することになったり、ヨーコ(・オノ)さんやイギー・ポップがスタジオに遊びにきてくれたりしました。つまりボブのニューヨーク・コネクションで『HAPPY HOUSE』のレコーディングができたんです。そのレコーディングが終わって、「CBGB」と「DRUMS」でライブをやることになったのもボブが話をつけてくれたから。シーナはいつも「ボブは私たちのところに神様が遣わせてくれたロックの使者だね」と言ってました。
CBGBのアニバーサリー・ライブ
全曲阿久悠さん作詞のアルバム『Rock on Baby』のレコーディングを1993年にロンドンでやっていたら、東京から電話があったんですよ。娘たちから。「今、CBGBから電話があった」って言うんで、ロンドンからCBGBに電話したら、ちょうどCBGBが25周年だったのかな……12月をアニバーサリー月間としてゆかりのあるバンドに出てもらうという企画で、よかったらシーナ&ザ・ロケッツも出ない? という内容だったんです。「うわぁーっ!」って喜んで、二回目のCBGBでのライブをやることになりました。13枚目のアルバムが出るタイミングだったので「じゃあ12月13日にお願いしたい」とリクエストを出したりして。ボブも喜んでましたね。
最高のロック・フォトグラファー=ボブ・グルーエン
ロックがわかってて、ロックが好きで、ロックに捧げて一日中ロックのそばにいたい、つまり僕たちと同じ気持ちを持ったカメラマンで、撮る人のありのままの姿、ありのままで最高の瞬間がわかる人なんですよ。それがボブの写真だと思う。ストリート・ロッカーのマインドを持った、最高のロック・フォトグラファーですね。僕は「ロックはナマだぜ」っていつも言ってるけど、ボブの写真からは「ロックは生きている」っていう感じが伝わってくると思います。クラッシュもピストルズもブロンディもパティ・スミスも、大事なロックは全部ここにある。発売される写真集は「音楽が聴こえてくる写真集」。素晴らしい記録であり生き様が刻まれたアートです。
(インタビュー&テキスト 青野賢一)
鮎川誠 Makoto Ayukawa
1948年、福岡県久留米市出身。九州大学卒。1970年からサンハウスのリード・ギター/コンポーザーとして活動を始める。1975年サンハウス「有頂天」を発表。 1978年シーナ&ロケッツを結成。初ステージ以来、今日まで一切のブランクなしに活動を続け、2015年にシーナが病により急逝するも、シーナのロックンロールハートを胸に抱いて、47都道府県ツアーを展開中。2017年11月シーナ&ロケッツ結成40周年を迎える。マーシャル直結のレスポールギターをトレードマークに、常に時代の中で革新的な存在であり、日本のロックシーンで抜群の信頼感、存在感を誇る。音楽以外では、数多くのCM・広告に出演する他、俳優・執筆・DJ・モデル等幅広い分野でも活躍する。
ROCK SEEN 特設サイトより引用
2017 ROCK SEEN Japanese Edition
go to ROCK SEEN2 on rokketweb